2024年05月01日
宇多田ヒカルがデビュー25周年を記念し、初のベストアルバム「SCIENCE FICTION」を発売、さらに約6年ぶりに全国ツアーを行うと発表されたのは去年の12月のことだった。
振り返ると年が明けてから今年は宇多田ヒカルの年、と言わんばかりに色々なことがあった。
1月にはツアーの日程の発表があった。
そして、1月末から2月末にかけてチケット申し込みの受付。
合計で20万人ほどのキャパシティに対して100万件強の申し込みがあったと聞いている。
3月には抽選結果の発表。自分は3か所申し込みをしていた。
単純計算すると倍率が5倍強なので、厳しいか?と思いつつ、7/24のさいたまスーパーアリーナの公演に当選することができた。
12件申し込んで全て外れた、というポストもXで見たことがあり、幸運だったと言わざるを得ない。
そして、4月にはベストアルバムの発売だ。
初のオールタイムベスト。宇多田ヒカルがAutomaticでセンセーショナルなデビューを飾った時に自分は9歳のころだった。
そこから25年の時が経った。ベストアルバムの楽曲のリストを見るだけで青い春が思い出される。
DISC1
DISC2
デビュー曲のAutomatic
から始まり、光
、SAKURA ドロップス
、COLORS
などの初期のキラー・チューン。
中期のFlavor Of Life
、Beautiful World
も最高だし、直近のBADモード
から収録されている曲も凄くいい。
率直にいって強力なラインナップ、実際に4月10日に発売がされてからほぼ毎日聴いている。
冷静になって眺めてみると往年の名曲とされる楽曲でも収録されていないものが多いことが気づく。
例えばWait & See ~リスク~
は約160万枚売り上げた。宇多田ヒカルの中でも代表曲の一つだが、今回のベストアルバムに登場していない。
なんか面白そうだと思ったので、Spotifyでベストアルバムに収録されなかった楽曲でベストリストを作ってみた。
選曲は10曲。
{曲名} / {収録アルバム}
という記法で記載していく。
上にも書いた宇多田ヒカルの中でもTOP3の売り上げを誇る往年の名曲。
「ミリオンヒットを飛ばしたのにベストに収録されない」という異常な事態が起きていることに気付く。
同じくDistanceからR & B調の名曲。楽曲自体もすごく好きなのだけど、歌詞も凄くいい。
誰かの為じゃなく 自分の為にだけ優しくなれたらいいのに
一人じゃ孤独を感じられない
2000年の発売なので、これを出した時は16~17歳くらいだろうか。
「一人じゃ孤独を感じられない」というワードに35歳になった今の俺でもハッとさせられる。
「私の声が聞こえてますか」というシンプルなメッセージが良い。
ツアーの当選を待つ間、毎日のようにこの曲を聞きながら「私の声が聞こえてますか?」「心の電波届いてますか?」と願い続けていた。
実際に当選したのでこの楽曲は外せない。
AutomaticのB面シングル。うまく言えないがこの曲を聴いた時だけ、宇多田ヒカルの曲ではほとんど感じることのない「完成されていない若さ」みたいなものを感じる。Michael.JacksonのABCみたいな感じというか。
宇多田ヒカルでは珍しいロック調の曲。
サビの盛り上がりがエモい。この曲が宇多田ヒカルで一番エモいと思う。採用。
通して聴いていると終盤の歌詞が妙に頭の中に残る。
お父さんkeep trying, trying
お母さんkeep trying, trying
お兄ちゃん、車掌さん、お嫁さんkeep trying, trying
シンプルに頑張っていこうぜみたいなメッセージソングだと思うのだが宇多田ヒカルが言うだけでかなり励みになる。
明日からも頑張っていこう。採用。
カップルの男性視点と女性視点の歌詞が交互に続く。
男女のデュエットでこういうテイストの曲はありそうだけど、独りでやるのは珍しい気がする。
曲調がダークな感じがするのが宇多田ヒカルの中では珍しい気がする。名前がヒカルだし。採用。
「自分が幸せかどうか」というのは多くの人にとって関心のある話題であると思う。
俺は生きていく上で「幸せ」についてはあまり考えないようにしている。
人生は究極的に「いま」が連続しているだけで、「幸せ」というのは過去を振り返った時の評価に過ぎない。とはいえ過去を振り返った時に「幸せ」という評価のみがされることはほとんどない。これは人間の本能的にそうだと思うのだけど、嫌な思い出の方が印象に残っていることが多いと思う。(嫌な現象をよく覚えていることで回避が可能になるため)。逆に「未来」の方に目を向ける。そこでも「幸せになれないかもしれない」という「恐怖」が生まれることがある。恐らく、おおよそ全ての負の感情は時間を「いま」という面ではなく、広がりとして捉えた時に生まれるんだろう。そう考えると幸せについて考えれば考えるほど、幸せから人間は遠ざかっていく。つまり、ポジティブな精神を保つためには「いま」を強烈に意識した方が良い。自分とその瞬間に関係している事象・物体だけが存在する世界が現れる。そこに「幸せ」という概念が入り込む余地はなく、「集中」で満たされている。
このように俺は「幸せ」かどうかをなるべく考えないようにしているし、そのことに意味を感じていない。死ぬときに一度だけ自分の人生が幸せだったか評価するだけで充分である。
ただし宇多田ヒカルの前では無意味な考えで、「幸せになろう」を聴いているときだけは「幸せになろう」と思ってしまう。
それはオフィシャルな野望だからである。
ミドルテンポでタイトな印象でお洒落な気持ちで聴ける名曲。
同性愛をテーマにしているらしい。注目してみると確かにそうだと思う。
俺が宇多田ヒカルで一番好きな曲。横ノリのAutomaticとは路線が変わって、突っかかり気味で進行していくリズム、絶妙な歌のメロへの乗せ、歌詞の全てが最高に感じる曲。
いいオンナ演じるのはまだ早すぎるかな
女じゃなくてオンナって。
あんな約束忘れたよ 指輪も返すから 私のこころ返して
10代なのに指輪って。このあたりの歌詞にいつも驚く。
PV。この頃の見た目が一番好きかも。黄色いジャケットがここまで似合うオンナは俺の中で存在しない。
一番好きなライブ映像。振付が良い。あと尻尾みたいな謎のアクセ。
というわけで勝手にSCIENCE FICTIONに収録されなかった楽曲で10曲を選んでみたのだった。
改めて一覧化してみる。
初期の方が良く聴いていたので、初期からの選曲が多い結果になったと思う。
ミリオンヒットも2曲あるし、これはこれでかなり強力なラインナップであると思う。
Spotifyにプレイリストを作成したので暇な人は聴いてみてほしい。
自分で言うのもあれだが、めちゃくちゃ良い楽曲が続いている。
ただし、これでも宇多田ヒカルにとってはベストアルバムに選曲されていないという事実がある。
スポーツ漫画でたまにみる「強豪校の一軍と必死こいて戦っていたと思ったら、途中で全員二軍のメンバーだと知らされて絶望した」みたいな感覚を味わえるかもしれない。層が厚すぎる。ではでは。