2024年03月07日
過去に書いていた日記を発掘して、いまのブログに移行するという作業を気が向いたときにしている。
というわけで今日は約8年くらい前だろうか、営業になりたてだった頃の自分が電話応対について書いた記録を。
仕事をしていて最近かんがえているのは電話応対のことである。
特に報告していなかった気がするが、自分は今年の四月に部署が変わったのだった。前にいた部署は外部から電話がかかってくることは滅多になかったので、電話応対というものをしたことがほとんどなかった。今いる部署は、外から電話がたくさんかかってくるので、電話応対を覚えることが仕事の第一歩だった
異動したての頃は電話応対どころか、電話の転送すらうまくすることができなくて、家に帰ってから真剣に悩んだり、くよくよしてしまって、電話をとることに恐怖を覚えることすらあった。仲の良い先輩に相談をしたら、とにかく左手は常に電話機に置いて、1コール目で電話を取りまくっていれば、いずれ慣れるよ、というような話を聞いて、実際にそうするようにした。いつでも電話がとれるようにしていたし、実際に電話が鳴っていなくても受話器を取ったりもしていた。そうしていると、その瞬間にまさに電話がかかった場合にほぼノータイムで電話が取れるのである。約半年の間、そういう風に電話を取りまくっていたら、電話の転送はほぼ完ぺきにこなせるようになったし、「ああ、〇〇はただいま席を外しているので、折り返しでもよろしいでしょうか?」だとか「大変申し訳ありませんが、本日は失礼させて頂きました」とかいう、取次先の相手が不在の時に使う文句もよどみなく口から出るようになった。こうして文面にしてみると、そもそもいないんだから「よろしいでしょうか?」も何もないだろとか、帰宅したことを「失礼させて」と表現するのもどうなんだ、とかいろいろと思うところがあるが、他の会社に電話をかけた時も大体同じようなことを言うので、たぶんどこの会社も同じような感じなんだろう。できるだけ表現をぼかすのがミソなのである。「〇〇はいま喫煙所でタバコを吸ってて―」とか、「部署の飲み会があるので〇〇は帰りました。」とか、実際のことをそのまま答えてしまう会社は今まで見た事がない。
そんな風に、大体どこにかけても、実際のことは答えてくれないんだろうとか、電話応対というものに対するすべてを知ってしまったかのような、諦めに似た気持ちを抱き始めていたのだけど、先日にちょっと考えさせられる電話応対をする会社があった。結構、相手先の中では部長とかそのくらいの地位の偉い人に電話をしたいと思ったのだけど、もちろん、部長に一発で繋がるわけがなく、常に左手を電話機の上に置いていることを義務付けられているような下っ端の事務員が電話を取ることになったのだった。女性だった。
「お世話になります。〇〇部長はいらっしゃいますか」
「あぁ…すみません、今は席を外してて、ちょっと小便に行ってるんですよ」
「え?」
「あの、小便に行っているので今はいません」
「急ぎの用だったんですけど、んじゃ、小便ということですので、5分後くらいにかけ直します」
初めて聞いたフレーズだったので、思わず聞き返してしまったのだった。
確かに、部長クラスの偉い人とはいえ、俺みたいな下っ端と同じ人間であり、好む好まざるにかかわらず小便をしないといけないだろう。しかし、実際に言われてみると、いろいろと思うところがあるのだった。
俺は小便には仕事中、何回も行くが、その度に同僚に対して「小便に行く」と、わざわざは伝えない。しかし、下っ端の事務員が実際にそういっているのだから、この部長は小便に行く度に「ちょっと小便に行ってくるよ」と、周りに伝えている可能性が高い。その上、「お手洗い」ではなく、「小便」と限定されているので、この部長は恐らく「小便」と「大便」を区別して、事務員に伝えているのだろう。だから大便に行く時は「大便に行ってくるから、ちょっと遅くなるよ」とか言っているのだろうし、もしかしたらその上に「下痢気味だからしばらく戻ってこないよ」とか「便秘気味だからちょっと時間がかかるかもしれないけど、ヨロシクね」なんていう詳細まで周りに伝えているのではないかと思う。そして、俺が電話をかけて「〇〇部長はいらっしゃいますか」と聞いた時に変な電話応対が生まれてしまうんだろう。
「あぁ、すみません、今はちょっと席を外していて、ちょっと大便に行っているんですよ」
「え、そうなんですか。急ぎの用なんですけど、あー、大便かー。小便だったら2,3分くらいだけど、大便だったら10分後くらいにかければ大丈夫ですかね」
「えぇ、まぁ普通の大便だったらそのくらいでしょうけど、なんていうか申し訳ありません、便秘気味だから時間がかかるって言ってて、20分くらい見た方がいいかもしれませんね。普通の大便だったら早い時は5分くらいで戻ってくるんですけどね、まぁこればかりは生理現象ですから」。
そして、20分後に部長が戻ってきた時に、「いやー便秘気味って聞いたんですけど、ちゃんと出ましたか?ちなみにいつからです?」とかいらないことを聞いてしまって、そうなるともはや仕事どころではなくなってしまうのだった。