QLITRE DIALY

2024年の夏に読んだ本について

2024年09月07日

タイトルの通りこの夏に読んだ本について。

今までめちゃくちゃ面白いと思えるような本があったら個別に紹介する記事を書いてきたけど、1冊の本についてまとまった内容の記事を書くのは意外とエネルギーが要るよなあ、ということをさいきん考えている。

以前に「会社から遠い場所に住むこと」で書いた通り、6月に物件を購入をして引っ越してからというもの通勤時間が伸びたので、読書する時間が増えて、必然的に本を読むペースというのが早まったと感じている。引っ越したのが6/15のことだったので、だいたい三ヵ月が経過。いちおう読み終えた本はブクログで記録だけはしていて、そのデータを見てみると引っ越してから12冊ほど読んでいた。家の中ではあまり読書はしていなくて、主に電車の時間に読んでいるだけではあるものの、およそ毎週一冊のペースで読めていることになる。これは良い傾向で、通勤時間が長いということはデメリットばかり語られるが、物事の全ては捉え方次第であり、捉え方によっては「強制的に読書に集中できる時間が確保できる」というメリットがあるといえる。というわけで読書ペースが速くなっていることもあり、一冊一冊紹介するのは追いつかないだろうなという感覚はあるが、何らかの記録はしておきたいということで、この夏というくくりで読んだ本をざっくりと紹介していく。ここでの夏はおよそ6月~8月とする。

『夜と霧 新版』ヴィクトール・E・フランクル

むかしから持っていたが何となく読んでいなかった一冊。引っ越しをするタイミングでそういえば読んでいなかったな、ということで一発目に。

精神科医、心理学者であるヴィクトール・E・フランクルの強制収容所の体験記。世界的な名著とされている。残虐な行いではなくて強制収容所の中という極限状態の日常で人間が何を考えているのかということをリアルに綴っている。率直にいって劇的な心情を想像していた。が、思っていたより淡々とした語り口で淡々とした日常が描かれていていることも多く、少なからずギャップを感じる。絶望的な状況でもなお日常に希望を見出す人間の強さを感じる。自分は日常をもう少し愛した方がいいのではないか、そんなことを考えた。

『新版 考える技術・書く技術 問題解決力を伸ばすピラミッド原則』バーバラ・ミント

コンサルの人にこれは必読書と言われて気になったので読んだ本。ピラミッド方式に上から下にロジックを積み立てるのが、論理的だ…ということが書いてあったように思うが正直なにかが身に着いたかというと怪しいところがある。レビューなどで指摘がされているが訳文があまり良くないのかもしれない。

友人にかみ砕いた実践編のような本があるとも聞いたので、こんど挑戦してみようと思う。

『終わりなき夜に少女は』クリス・ウィタカー

これは以前に単発で書いたのでそちらを参照されたい。

読書感想 終わりなき夜に少女は | クリス・ウィタカー

『パーティーが終わって、中年が始まる』pha

phaさんが中年になって感じている喪失感についてまとめられたエッセイ。

自分も30代中盤になって若くはないという年齢になってきている。共感できる部分が多い。これほど中年の喪失感について言語化されている本も珍しいのではないかと思う。言語化されるとそのアンニュイさを捕まえることができるような気がするというか、前向きに生きていくことができるようになった気がした。良い本だった。

『ガザとは何か~パレスチナを知るための緊急講義』岡 真理

大田 ステファニー 歓人さんの発言の影響もあり、何が起きているのか知っておく必要があると思った。イスラエル建国の歴史的な背景からいま何が行われているのかを一通り知ることのできる本。タイトルの通り講義内容を書き写しているので、重複している話も多いものの、広く読まれるべき本だと思う。

『BIG THINGS どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか?』ベント・フリウビヤ

エンパイヤステートビルの建設から高速鉄道の敷設、ITプロジェクト、オリンピック…古今東西のビッグプロジェクトのデータを集め検証をし、成功・失敗の要因についてまとめたという面白本。プロジェクトタイプごとにコスト超過率の平均値などの詳細データもあり。ちなみにワースト一位は核廃棄物貯蔵プロジェクトの238%。時点はオリンピックの157%だ。

自分も仕事でIT導入のプロジェクトに関わることがあるので、まぁオリンピックに比べると全くビッグではないが、決められた期間と予算を元に遂行する必要があるということで、参考になる部分が多かった。鉄則は「ゆっくり考え、素早く動く」だ。ちなみに訳者は櫻井祐子さん。この方の訳書は当たりが多いのでチェックをしたい。

『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫NV)』ジョン ル・カレ

これも積読していてやっと手を出した本。スパイ小説の金字塔とされている。英国諜報部に20年にわたってもぐりこんでいたソ連の二重スパイを探すというのが全体のあらすじ。時系列がかなりぐちゃっとしているので、正直にストーリーについていくのが難しかった。2011年に裏切りのサーカスとして映画化されている。主人公のジョージ・スマイリーはゲイリー・オールドマンだ。コリン・ファース、トム・ハーディなど名優も出演。次は映画を観てみるか…。

『成瀬は天下を取りにいく』宮島 未奈

「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」。

志賀は大津を舞台にした圧倒的な青春小説。ちなみに宮島未奈さんにとってデビュー作となる。

とにかく面白いので、一日で読み終えてしまった。主人公の成瀬のキャラが良い。全国の書店員が絶賛というのも頷ける。一発で「成瀬」にノックアウトされてしまった。続編「成瀬は信じた道をいく 」も既に発売されており恐らく買うことになるだろう。

これは恐らく映画化などのムーヴメントも起こるのではないだろうか。

『「世界の終わり」の地政学 上 野蛮化する経済の悲劇を読む (集英社シリーズ・コモン)』ピーター・ゼイハン 上・下

アメリカがこれまで守ってきたグローバル世界はまもなく崩壊する(というか崩壊しかけている)という観点から、輸送、金融、エネルギー、工業用原材料、製造業、農業などの分野がどう変わっていくのか、ということをまとめた本。僕たちが住む日本についても語られていて、、率直にいってあらゆる分野で絶望的なことになりそう。今のグローバル貿易というのが絶対に成り立たなくなるので、あらゆる分野で破綻が起きるだろう、という黙示録を予感させる一冊。単に恐怖をあおっているのではなく、地政学的な観点で根拠をつけて論じているので、直視せざるを得ない。銃・病原菌・鉄で成り立ちから語られた今の世界が、今後どうなっていくのか、というアンサーとなる本。

おわりに

かなりメモ的ではあるが、改めて振り返るいい機会になったと思った。今後も単発での紹介をはさみつつも定期的にまとめて紹介する、、というのをやっていきたい。ではでは。