2023年03月30日
「また次もほめられよう」と思って書くと、だんだん自分がおもしろくなくなってくる。いずれにせよ、評価の奴隷になった時点で、書くことがいやになってしまう。
他人の人生を生きてはいけない。書くのは自分だ。だれも代わりに書いてくれない。あなたはあなたの人生を生きる。その方法のひとつが「書く」ということなのだ。
とても良い本だった。一気に読み終えてしまった。
なによりもタイトルが、かっこいい。
このタイトルは当たり前のことを言っているようで、妙に納得させられてしまうものがある。
Amazonで注文をして翌日には本が届いた。
読む前に本を眺めてみる。そのタイトルが目につく。
「読みたいことを、書けばいい。」
そうか、読みたいことを書けばよかったんだな、俺に足りてなかったのは、これだったんだ。
そんなことを考えずにはいられなかった。
読む前から何か大事な秘密を知ってしまったような、気持ちよさを覚えていた。
もう少しタイトルについて考えてみる。「読む」も「書く」もどちらの人間の動作をあらわしていて、要するに「やりたいことを、やればいい。」となる。
この「やりたいことをやる論法」というものは日常で汎用的に使えるフレーズなのではないかと感じていた。
「書きたいことを、読めばいい。」
とりあえず順番を逆にしてみた。
まぁあまり使う場面が思いつかないのだけど、とりあえず意味の破綻は起きていないことが確認できる。
歓送迎会のシーズンということもあり、二次会でカラオケに行く機会があるかもしれない。
まぁカラオケで何を歌うか、ということはサラリーマンなら一度は悩んだことがあると思う。
Apple Musicなどでも「50代の上司に受ける曲ベスト100」などのプレイリストを見かけたことがある。
別に好きでもないが場を盛り上げるために練習をする、という苦労が世の中には確かにある。
そんな時に使いたいのがこの論法だ。
「聴きたい曲を、歌えばいい。」
そうか、難しく考えることはなかったんだ。周りのことなんか気にしなくていい、俺が好きな曲を歌えばよかったんだ。
そんな気持ちになる力がこの言葉にはある。
その他にも、「知りたいことを、聞けばいい。」などのセリフは新入社員に対して使えそうだし、「食べたいものを、食えばいい」などと同じ動作を続けても面白い。
第三者による評価を基準として飲食店に入ることもあったよなぁと、妙にはっとさせられる気持ちになる。
このように「やりたいことをやる論法」は当たり前のようでいて、日常の認識を変えるパワーを持っている。
それに気づけただけで、約1,500円の金を払った価値があると思った。
副題に「人生が変わるシンプルな文章術」とあるとおり、文章術について書かれた本だ。
文章術というとまず思いつくのがSNSでバズる方法についての文章だ。
なぜなら目にしたくなくてもネットでその手の情報は目に入ってくるからだ。
この「読みたいことを、書けばいい。」ではSNSでバズる方法は書いていない。
というよりもSNSのバズについては身も蓋もないことが書かれている。
だれも読まない。だれも読まないのである。わたしのように、依頼主がいて、その文章を掲載する場所が最初から用意されていても、だれも読まない。ましてや、自分で開設したインターネット上のスペースにそんな文章を載せても、だれも読まない。なぜか。あなたは宇多田ヒカルではないからである。
あなたがたとえば「ローマ帝国1480年の歴史」という事象に興味を持って丹念に資料を調べ、とてつもなくエキサイティングだったという心象を、自分自身で読んでおもしろいウンチクやギャグをちりばめた文章にしてインターネット上に載せても、十数人から、多くて数千人がたまたま目にして終わるだろう。
だが、たとえば宇多田ヒカルが美味しかったロースカツ定食840円の話を書いたら、数百万人が争って読み、さまざまなコメントを山のように寄せ、豚肉の売り上げは跳ね上がるだろう。
この後に大事なのは誰に読まれるか、ではないということを言っている。
「たくさん読まれたい」「ライターとして有名になりたい」という思い違いを捨て、まず、書いた文章を自分がおもしろいと思えれば幸せだと気がつくべきだ。
ジャンルとしては文章術についての本なのだろうが、このように書くことに対する態度、心構えについての話が多い。
文章術についての本は数多しといえども、アティチュードに対して書かれた本は少ない。
タイトルに不思議と納得させられた、という話は上に書いた通り。読み終わってさらに納得する。
そっか書けばいいんだ、というように前向きになれる。
この本を読み終わってすぐ、ブログを書きたいと思った。
ところどころギャグが散りばめられていて、読み物として完成度が高い。
それでいて、読後に行動したいという気持ちにさせるパワーがある。すばらしい。
そういわれてみると、宇多田ヒカルが書いた840円のロースカツ定食の話はめちゃくちゃ読みたい。