QLITRE DIALY

SF小説を読む 『三体』

2022年08月14日

SF小説を読むシリーズ。今回はリウ・ツーシン著の『三体』について。

書店で大々的に紹介されているのは認知していたのだけど、なかなか手を出せないでいた一冊。

前回読んだ『プロジェクト・ヘイル・メアリー』が『三体の次はこれを読め!』みたいなポップで紹介されていて、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』がどちゃくそ面白かったので、「じゃあ『三体』も読んでみようか」という気持ちになったのが購入した理由だ。

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』については過去ののエントリを参照。

SF小説を読む 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』

さて、『三体』であるが、いよいよ買ってしまった、という感じがある。

というのも、この『三体』、シリーズもので全5冊ある超大作。

「タイトルが『三体』だから、『上・中・下』の3冊構成だろうな」、とたかをくくっていたのだが、なんと、『三体』、『三体 Ⅱ 黒暗森林 上・下』、『三体 Ⅲ 死神永生 上・下』の5冊構成。

ちなみに2015年に世界最大のSF賞とされるヒューゴー賞長編部門を受賞。英語圏以外の小説が受賞するという初の快挙を成し遂げた。

現在は1冊目の『三体』を読み終えたばかり。感想を下記にまとめていく。

あらすじ

1967年、中国。文化大革命で物理学者の父が惨殺された葉文潔(イエ・ウンジェ)は、人類に絶望し、失意の日々を送っていた。ある日、葉文潔は巨大パラボラアンテナを備える軍事基地にスカウトされ、人類の運命を左右する極秘プロジェクトに関わるようになった。

数十年後、ナノテク素材の研究者、汪淼(ワン・ミャオ)はある会議に招集され、著名な科学者が次々と自殺している事実を告げられる。汪淼は警察官の史強(シー・チアン)、通称"大史(ダーシー)"と協力しながら、黒幕と疑われる"科学フロンティア"の潜入捜査を試みる。三つの太陽を舞台にしたVRゲーム、『三体』の驚くべき事実、地球を襲っている怪現象の謎が次第に明らかになる…

SF感のない序盤

序盤はあらすじの通り、文革真っ最中の中国が舞台。

物理学者の娘、葉文潔が物語の中心的な人物らしく、彼女の絶望が世界を引き裂いた、的な伏線はところどころに張られているのだけど、回収されないまま話は進んで行く。このあたりは文革の闘争、激しい内ゲバと裏切りの話がメインなので、SF感がなく、あれなんか違うな?というような感想はあった。

エンタメ感が増す中盤

そこから40数年後の汪淼のストーリーになると、一気にエンタメ感が出てきて、ページを繰るスピードが加速する。特にここから話のメインになってくるVRゲーム『三体』の描写が面白い。

VRゲーム『三体』について

簡単に紹介をすると、一定の周期で日が昇る「恒紀」と日が昇るタイミングが全くでたらめの「乱紀」のある世界が舞台。「恒紀」は地球のように温度が安定していて、「乱紀」では気温が極端に下がったり、逆に極端に上がったりするので、人が生きていくのは難しい。「乱紀」のあいだ、キャラクターは「脱水」と呼ばれる特殊能力を使って、身体中の水分を全て取り除いて、生命をつなぐことができるようだ。

この「恒紀」と「乱紀」が訪れる周期は全くの不規則で、この周期の謎を解き明かして文明を発展させていく…というのがゲームの目的であるらしい。謎を解くことができないと、「乱紀」により文明が崩壊し、ゲームオーバーメッセージが画面に現れる。

この夜は四十八年間つづき、文明#137は極寒の中で崩壊しました。この文明は、崩壊前に、戦国期にまで到達していました。

文明の種子はまだ残っています。それはいつかふたたび発芽し、『三体』の予測不能の世界で育ちはじめるでしょう。またのログインをお待ちしています。

終盤の超伏線回収

途中まで「なんか主人公っぽいやつが面白いゲームやってる小説だな」的な感想。

いや、それはそれで面白いんだけど、終盤に一気にこれまでの伏線が回収され始めてからがヤバい。

文革時代の葉文潔の人類に対する絶望と、VRゲーム『三体』、自殺する科学者の謎が全て一つの話につながっていって、脳汁がどばどば出る展開が待っている。

前述のVRゲーム『三体』がメインの話になっていくんじゃないかと思っていたのだけど、その予想の上を行って、アーサー・C・クラークの「幼年期の終わり」的な超スペクタクルな展開が彷彿とされてくる。超話題のジェットコースターに乗っていて、頂上まで来たところで、第一部が終了するような感じ。今後も怒涛の展開が予想されるので、これでは次の『三体 Ⅱ 黒暗森林』を読まずにはいられない。

全体的な感想

タイトルが『三体』と固めなのと、不穏な表紙からハードSFを想定していたが、ハードな面もありつつ、エンタメ感が非常に強い小説。科学的な下りの解説で難しい部分はあるけど、あまり気にしなくてもいいような気もする、どちらかというとストーリー展開で読ませるタイプだと思うからだ。

ちなみに自分はいきなり5冊は買わずに様子見で1冊目の『三体』のみ購入をしたくち。

5冊一気に買うのは物理的に重いし、それに財布の中のお金の問題もある。

正直に言って、読む前は、書店の取り上げ方が大げさなんじゃないかと、逆張りしたような気持になっていた。

面白かったら次も買おうくらいに構えつつ、前述のとおり脳汁が出まくった結果、読み終えた翌日に朝一に書店に駆け込み残りの4冊をまとめて購入。今となっては完全になめていたと言わざるを得ない、順張りは大事だな。

2部、3部と読み終えたら引き続き感想を書きたい、ではでは