2025年04月18日
昔やってたgooブログのサルベージシリーズ。
今回はフェラ・クティ自伝を読んだ読書感想録を。この本自体は財布が厳しい時代にメルカリで売ってしまった経緯がある。しばらく市場に出回っていなくてAmazonで値段が高騰していたことを確認して後悔をした一冊。まぁ値段がどうとかいうのはどうでもいいけど、やはり本はなるべく売らない方がいいな、と思う。
久しぶりに覗いてみると再びアマゾンで流通しているらしい。面白い本だったので再購入するか悩む。(最後に貼ってるのはアマゾン・アソシエイトリンクです)。
というわけで以下は当時に書いた日記のコピペ。
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"FELA!! THIS BITCH OF A LIFE" 邦題『フェラ・クティ自伝』を読んだ。
フェラクティはアフロビートという音楽ジャンルを確立した人物として有名だが、彼の音楽は一枚のアルバムしか通して聴いたことがなく、いってみればほとんど知らない。そもそもアフロビートという音楽ジャンル自体もなんだかよくわからない。この本を読もうと思ったきっかけは、ブログのタイトルにも引用させてもらった、「ブラック・プレジデントの声が聞こえる。」というキャッチコピーのかっこよさと、その一枚しか聴いたことがないアルバムというのが、実は最近に買ったもので、それがとてもよかったというのが主な理由である。ちなみにそのアルバムのタイトルも"BLACK PRESIDENT"だ。
アフロビートという音楽がいったいどういうものなのか、本を読んでもさっぱり分からなかった。というのもこの本は彼が自身の音楽について語っているものではなくて、音楽生活を中心に彼を取り巻く人生を語った作品だったからだ。
著者はカルロスムーアという人物で、フェラに対して行ったインタビューを元に、口語体で、まさにフェラが我々に語りかけるような文章に編集されている。また、フェラ自身の語りの他に、彼と関係の深い人物に実際に行ったインタビューの文章も掲載されている。
冒頭のとおり、フェラクティという人物をあまり知らないが、かなり引き込まれて読んでしまうタイプの本だった。凄まじい人生だった。フェラクティが生まれたナイジェリアは、政治家による汚職がはびこる国であり、彼は猛烈な批判をメッセージにして曲を作っていた。そのせいで、警察や軍をかなり敵に回していた。大雑把にいって本書の半分ちかくは、警察や軍との闘争の話であったし、闘争とはいいつつも、フェラには武力はなく、一方的に理不尽にぶん殴られているシーンも数多くあった。あまりにも酷い仕打ちを受けているシーンも多く、ショックを、感じる。しかし、なんど理不尽な目に遭おうとも、さらにその理不尽さを批判する曲をフェラは作り続けていたことがわかる。そんな彼だからこそ、民衆から人気があったのだろうし、今もなお聴きつづけられる魅力が彼の音楽にはあるのかもしれない。
一方で、フェラという偉大なアーティストは、もしかして凄くダメな奴なんじゃないだろうか、というエピソードも見受けられた。フェラクティには一時期27人もの妻がいたのだが、本書の中でカルロス・ムーアはそのうちの15人に実際にインタビューをしている。ほとんどの妻がフェラとの出会いについて聞かれているのだが、たとえばあるクイーン(フェラは妻のことをこう呼ぶ)は「…ある日、三人で職場に向かっているときにフェラたちに会ったの。裁判所に行く途中だったみたい。そうしてたらフェラが男の子をよこして、私のことが気に入ったっていったわ。」と答える。「男の子をよこして」というところが、なんとなくせこいと感じてしまった。しかも、このように取り巻きの男を使いによこして、「フェラが君のことを気に入ったって」と伝えることで関係が始まっているクイーンが、かなり多い。言及はされていないが、フェラ・クティのナンパの常套手段である可能性は高い。ちょっとくさいセリフになってしまうが「気持ちくらい、自分で言えよ」と突っ込まずにはいられない。
フェラは、同じように体制側と戦いながら成功を収めたボブマーリーと比較され、あまり報われなかったと評価されていた。華々しく散ることもなく、徐々に病で衰弱していき、死んでしまう。偉大なアーティストのインタビューにより明らかになる、人間くささ、それがあるからこそ、読み終えたときに少しかなしい気持ちになってしまう。