2024年02月04日
過去にgooブログで書いたエジプト旅行の記録が発掘できたので、再投稿。
旅行をしたのは2014年の9/23から9/28だった。読み返すと、ところどころでぼったくられた話が出ていて、日本円で記録がされている。
2014年当時はドル円が105円-110円くらいだった。そのため今のレートで換算すると1.4倍くらいの値段になるかな、ということを考えていた。
9/23から9/28まで、休暇を取り、エジプト旅行に行ってきた。
大学時代の後輩との、二人での旅行だった。23日と24日はカイロを観光し、25日に飛行機でルクソールに飛び、26日にはまた飛行機でカイロに戻ってくる。27日の夕方にはカイロから日本に向けて飛び立つという、振り返ってみると、かなり慌ただしいスケジュールだった。それでもピラミッドやエジプトに根付く宗教の寺院を周り、迷路のような市場で道に迷い、ルクソールでは巨大な王墓「王家の谷」など、一通り目立つところは周ることができた。
海外旅行の楽しいところの一つに、人との出会いがあると思う。やはり異なる国、異なる文化で育った人間は、人への接し方も日本とは違うと感じる。言葉はほとんど通わせることができなかったのだが、いくつか印象に残る人との遭遇があった。良い印象を残す出会いがあれば、悪い印象を残す出会いもあった。もちろん、僕たちに悪い印象を残したり、良い印象を残したからと言って、その人が悪人であったり善人であるとは限らない。そこを踏まえた上で、何度かの印象的な出会いを書いていきたいと思う。
・タクシードライバー
顔はブラジルのサッカースター・ネイマールに似ていた。ルクソール空港に着いた時に僕たちは彼のタクシーで市内のホテルまで行くことにした。ルクソール空港から市内までは7km。タクシーの料金は400円程度が相場だが、1500円で乗せてもらうことになっていた。空港についた時、とても暑くて、折り合いが着くドライバーを探すのに疲れてしまっていたのだ。しかし、途中でお金をおろすために銀行によってもらったら、そのことを理由にさらに1500円の金額を要求してきた。揉めに揉めたが、結局僕たちは追加で700円程度のお金を払った。
・ラムセス7世の墓の番人
ルクソール二日目、王家の谷に行く。王家の谷というのは簡単に言うと、昔のエジプトの国王たちのお墓が集まる場所。入口のすぐ近くにある、ラムセス7世の墓に行くと、鉄格子がまだ降りていた。朝の7時くらいに行ったので、あいてなかったのだ。墓の入り口の前に座っていた番人が、鉄格子のかぎをあけながら、僕たちに話しかける。「君たちはラッキーだよ、なぜなら一時間後には観光客がごった返してしまうから」。一番乗りで墓に入るという、ちょっとした優越感に浸りながら墓を見学していると、先ほどの番人が隣に寄ってきて、壁画の説明をする。「これがオシリス神であれがイシス神で、中央にあるのがラムセス7世が入っていた棺だ」。エジプトの古代の神々については詳しくは知らないので適当に聞き流していた。しかし墓を出ようとすると、番人が立ちはだかって道を塞いでくる。「お前たちは俺のありがたい説明を受けたんだから金を払わないとダメだ」、というようなことを言ってきた。こんなことを言われると泣きたくなってきてしまう。結局700円程度のお金を払う。全然ラッキーじゃないじゃん!って思った。
・馬車乗り
ルクソール市内での観光馬車業を営む人。「ファイブ・ダラー!ファイブ・ダラー!」と叫びながらしつこい勧誘をしてくる。何度も断り、右に、左にかわそうとするが、馬を巧みに操り、道を塞いでくる。
・ハッサン
ルクソール神殿の前のエリアを縄張りにする馬車乗り。ルクソール神殿の入り口を教えてもらったが、「私の友達よ、ここで待っているから神殿から出てきたら私の馬車に乗ってくれ」と、何度も言ってくる。ちょっと恩着せがましい。
・ザッカーラ
ルクソールに行く日に、カイロで滞在していたホステルから空港まで僕たちをのせていったタクシードライバー。人のタバコを何の悪気もなく取って吸いまくる。車はとてもおんぼろで、ボンネットに定期的に冷却水を注がなければならない。ホステルの人にお金を払ったのに、ザッカーラは空港に着くと、相場の2倍程度の値段を請求してくる。後から聞いた話で、彼が実はホステルが手配したドライバーとは全くの別人であることが判明する。定刻に、ホステルから出てきた時に声をかけてきたので、勘違いしてしまったのだ。ザッカーラの奸計に見事にはまってしまった。ただのぼったくりドライバーよりも凶悪な何かを感じる。
・イスラム教徒
イスラム寺院で話しかけてきたスーダン人。日本語を教えてあげると歓喜の雄叫びをあげる。日本製のペンをあげると、なんと金をはらおうとしてきた。断ったが、金をはらおうとしたのは後にも先にもこの人だけだった。
・カイロ“family palace hostel”ホステルのオーナー
イスラム教徒なのにやたらと飲酒をすすめてくる。深夜1時頃に蚊に刺されに塗るクリームはあるか、と聞いたら、近くの薬局に電話してクリームを手配してくれた。陽気。ラウンジではネスカフェやお茶をくれる。
・レストランジャンボリーのシェフ
ルクソールのホテルの近くでレストランを営むシェフ。料理がとてもうまい。ヒップホップが好き。サービスでサラダをくれる。
・ピラミッドツアーのガイドのおばさん
日本語がうまい太ったおばさん。激しい息切れをしながらも頑張って日本語でガイドをする姿には胸を打たれる。
・ルクソールのホテルボーイ
着いた日の翌日に、王家の谷のツアーを頼むと、すぐに話がまとまった。仕事が早い。ホテルのドアが壊れて開かなくなった時に、隣の部屋を扉が開くようになるまで使わせてくれる。
エジプト旅行では上記のように、色んな人との出会いがったが、その中でも特にカリスマ性を見せつけ、謎を僕たちに残していった人物がいた。
カイロに着くと、僕たちはタクシーで、滞在先のホステル“family palace hostel”に向かった。ホステルと名のつく通り、一泊1000円程度の、いわゆる安宿の部類に入る。安宿とはいえ、個室ではあったし、清潔なトイレとシャワールームもついている。エアコンも稼働すれば、wifiもつながる、普通に滞在する分には何一つ不自由なところのないホステルだ。
ホステルに着くと、係の僕らと同年代くらいの若者がホステルの設備について、近所にある施設について、または手配のできるツアーについて、僕たちに流暢な英語で説明をする。その人物はムスタファと名乗っていた。僕たちが驚いたのは、彼の手配が可能なツアーの値段の安さと、そして範囲の広さだ。彼の手配するツアーは、日本で頼むそれの10分の1くらいの値段だ。そして、ルクソールにも旅行すると伝えると、ルクソールでもツアーの手配が可能だと話す。ルクソールは、カイロから600km以上も離れた都市だ。そんなに離れた場所にいる人間を、格安で手配ができるということは、ルクソールの業者にコネクションを持っていることを表すのではないだろうか。ただのホステルの従業員ではなくて、青年実業家、ムスタファはそんな印象を残した。
ムスタファは、事実、family palace hostelにとって特別な存在であるようだった。このホステルはいわゆる一族経営をしている。オーナーと、その息子二人が常駐し、客の世話から部屋の片づけまで、細々としたことを行って切り盛りをしているのだった。しかし、ムスタファだけが、彼らの一族とは血縁のない人物だった。そしてムスタファが、客の世話とか、部屋の整理だとかそういった細々とした仕事を行っているところはついぞ見た事がなかった。そもそもムスタファだけが、ホステルに常駐していないのである。
このホステルはいち従業員であるムスタファに全ての決定権があるように思えた。常駐しているオーナーに空港までのタクシーを手配してほしい、という話をすると、オーナーは、すぐに携帯電話を取り出し、ムスタファに電話をかける。「その件についてはムスタファに確認をしてくれ」と言う。ムスタファは電話の向こう側で、「手配はできる、しかし時間が急だから15ドルの手数料を払ってもらうよ」と話している。なぜムスタファに話を通さなくてはならないのか?
同じような場面はもう一度あった。カイロから日本へ発つ前日のことだ。飛行機の出発時間は18時くらいだった。しかしホステルのチェックアウト時間はamの10時だった。僕たちは3時くらいまで荷物を預かってほしい旨をオーナーに伝える。するとオーナーは「それならもう1泊分の料金を払うといいかもしれない。部屋も使える」と話す。そこへオーナーの息子が割り込んできて、オーナーと口論を始めた。アラビア語だったので理解不能だったが、「ムスタファ」という単語が何回か聞こえたので、恐らく以下のような内容だ。
「待てよ親父、こいつらが使ってる部屋は既に次の予約が入ってるんだぜ?」
「3時には出ていくんだろう?次の客が3時までに来るかどうかは分からない。次の客が来るまでに部屋をきれいさっぱりにしちまえば稼げるじゃないか」
「親父、そんなことしてるのがムスタファにばれたら、どんなことになるか俺は知らないぜ?いいからムスタファに電話をしろよ、今までムスタファの言う通りにして、間違ったことがあったか?」
「しかし。」
「しかし、じゃないだろ?」
「わかったよ」
以上のようなやり取りがあり、再びムスタファに電話をすることになった。結局僕たちは荷物を3時まで預かってもらえることになった。
ムスタファは一体、何者だったのだろうか。彼は結局、チェックインする時にしか僕たちの前に姿を現さなかった。もしかしたら従業員ではなくて、ホステルのコンサルタントのような仕事をしている人物かもしれない。姿を一切現さなくて、電話で重要な指示を出している姿を想像すると、マフィアのボスみたいでかっこいい。すべての決定権はムスタファにあった。強烈な印象と謎を残したが、いまムスタファの顔を思い出そうとしても、なぜか、うまくいかない。